アドバンス助産師の活躍

第6回 冨坂 幸恵様
(医療法人仁清会かみや母と子のクリニック職員)

はじめに、自己紹介をお願いいたします。

5年間看護師として働いた後に助産師の資格を取り、助産師になって21年目になります。アドバンス助産師は2016年に取得しました。  親の転勤が多かったのもあり、生まれは長崎県なのですが5年以上1か所に長く住んだことがありませんでした。でも沖縄に来て19年目になり、まさかこんなに長く沖縄にいることになるとは思ってもいませんでした。

勤務先のことを教えていただけますか。

沖縄の糸満市にある産婦人科のクリニックです。  2018年の分娩数は649件で帝王切開率は14.0%になります。助産師の人数はクリニックとしては多く、育休中の人も合わせて20名います。また県内初の「赤ちゃんにやさしい病院:BFH」として認定されています。

普段のお仕事の様子はいかがですか。

仕事は助産師としてなんでも行います。助産師外来、病棟担当、分娩係り、育児教室も担当します。妊婦さんは受け持ち助産師制で、妊娠中から産後まで継続的に関わるようになっています。

助産師を目指した理由やきっかけはどんなことでしたか。

私は自宅で生まれました。39歳の初産婦の母が予定外に私を自宅で生んでしまったのです。母はお腹の調子を崩しており、お腹の痛みを陣痛だと思わず、強くなって30分で生まれたそうです。最初は泣き声をあげずに父が病院に「死んで生まれました。」と電話したのですが、しばらくして泣きだしたそうです。そして父がまた病院に「生きてました。」と電話すると「じゃあ、迎えに行きましょう」と言われたそうです。この話を聞くのが私は大好きで、小さい頃からことあるごとに「私が生まれた時はどうだったの?」と繰り返し母親に聞いていました。自分の生まれた時の話がドラマのようで、聞くたびに私はすごい出産を乗り越えてきたんだと感動を覚えました。振り返るとこの話が助産師を目指したきっかけだと思います。

この仕事の難しさを教えてください。

妊婦さんは外来で最初にバースプランの話をしたときに、受け持ちの助産師が決まります。  助産師はその方が順調に経過するように、また健やかな出産・育児ができるよう関わっていくのですが、私は始めた頃は妊婦さんに体重の話ばかりしていました。体重が増えたら注意をして、ウォーキングや食事の話をして、自分が妊婦さんを管理している気分だったのだと思います。  当時は分娩検討会というのがあり、問題があった分娩を医師とスタッフとで検討していました。そうすると自分の担当した妊婦さんが出産でうまくいかない時に自分の指導の結果が見えてくるのです。自分の苦手な所やダメな部分が見えてきました。体重管理の話だけでは安産ができない、そして分娩でうまくいくことばかり目標にやっていると今度は育児がうまくいかないという所が見えてきました。  自分の指導やケアを振り返りながら、次の課題が見えてくるので、そこが難しいところだと思います。

この仕事の良いところを教えてください。

産後のお母さん向けに「産後のママ&ベビークラス」を運営しています。そのクラスに参加したお母さん達が、笑顔で帰っていくのを見ると、いい仕事だなと思えます。  退院してから2か月までのお母さんと赤ちゃん対象のクラスなのですが、産後2~3週間ぐらいの方も来ます。最初は緊張して不安げな表情の方もいるのですが、赤ちゃん体操をしたり、実際に赤ちゃんが寝やすいように丸々抱っこして一緒に歩いたりしていると、だんだんお母さんの緊張が取れて笑顔が輝いてきます。お母さん達同士でおしゃべりをして「よく泣いて大変です」「赤ちゃんの湿疹どうしてますか」など悩みを共有して発散し帰る時にはすっかり笑顔になっていきます。  このクラスを始めるきっかけが、産後3週目頃に赤ちゃんがよく泣くのが大変でミルクを足す人が増えるというのが分かり、それをフォローするためのものでした。1か月健診前で、まだクラスに参加するには早いし大変ではないかと思っていたのですが、やってみて1か月健診前に泣かれて不安が強くなっている人は多く、困っていることを表出し、共有する場として早いことはなかったなと思っています。

助産ケアの中で得意なことを教えていただけますか。

骨盤ケアの研修を受け、「体ほぐし教室」「トコちゃんクラス」「産後のママ&ベビークラス」とクラスを3つ担当させてもらっています。  得意というわけではないのですが、お母さん達の話を聞いたり、その方の身体や背景をみて必要な情報だったりケアをすることができるようにはなってきていると思います。

今後はどのような技術・知識を学んでゆきたいと考えていますか。

メンタルヘルスについても、問題を抱えている方が増えているので学んでいきたいです。

最後に、アドバンス助産師としての抱負や、これからアドバンス助産師を目指す方へのアドバイスをお願いします。

実は初めはアドバンス助産を取得することは考えていなかったのですが、うちでは師長が熱心に勧めてくれてシステムを教えてくれました。色々研修を受けたり、足りない分をオンデマンドで見たり、学会に行ったり大変だったのですが、今は良かったと思っています。  今までどうしても自分の興味ある分野ばかりの研修を受けていたのですが、アドバンス助産師はいろんな分野を勉強することになります。更新するにあたってまた研修や学会参加が必要になるのですが、知識の更新は必要なことだと思うので、助産師は一生勉強と思って頑張りたいと思います。

ご協力ありがとうございました。