アドバンス助産師Vol.9

2021.07.30

  • 【特集】新生児蘇生法に もっと 強くなろう!
    NCPRと産科医療補償制度①

     CLoCMiP®レベルⅢ認証においては、最終段階でウェブでの客観的試験が行われています。この試験は、申請された方が、CLoCMiP®レベルⅢ認証に相当する知識を備えていることを確認するために行うものですが、2020年に行われた試験も全体的に正答率は高く申請者の皆さまの学習成果が表れていました。
     一方で、やや正答率が低い傾向がある分野もあり、その1つがNCPRに関する問題でした。おりしも、2021年3月に改定された「NCPRガイドライン2020」が発表されました。助産師それぞれに、NCPRに関する知識をアップデートすることが求められていることを踏まえ、今号ではNCPRを特集することにいたしました。各立場から、現状や課題、期待を記述いただきましたのでご参照いただき、アドバンス助産師に必要な能力として強化していきましょう。
    (一般財団法人日本助産評価機構 理事 佐山  理絵)

埼玉医科大学名誉教授・佐久大学客員教授 田村 正徳

 NCPRは2007年から日本周産期・新生児医学会の学会事業として開始されましたが、それを全国規模で積極的に推進して下さったのが産科医療補償制度の再発防止委員会が毎年発行する「再発防止に関する報告書――産科医療の質の向上に向けて――」です。2011年の第一回報告書では、まだ分析対象は15件しかありませんでしたが、そのうち新生児蘇生について教訓となる事例が7例もあり、その中には新生児蘇生用のマスク&バッグを準備していなかった助産所や、帝王切開で仮死児が娩出されたが他に新生児蘇生の出来るスタッフがいなかったために執刀医が急遽メスを下ろして蘇生を行ったという事例もあったことから「新生児蘇生を適切に行うことは脳性麻痺の再発防止を図る上で重要である」と結論づけています。その上で、“学会・職能団体への要望”として「日本看護協会、日本助産師会等の団体には、分娩に立ち会う看護師、助産師が標準的な蘇生技術を習得するために、新生児心肺蘇生法講習会などの受講を義務付けるよう強く要望する。」とし、“国・地方自治体への要望”として「新生児蘇生法講習会の開催に適切な資金援助を行い、医療関係者の新生児蘇生法習得を支援することが望まれる。」と明記されました。

 

 当時埼玉県周産期医療協議会の会長をしていた筆者は早速この報告書を県の担当者に持参して、県内の助産師を対象としたNCPR講習会を県の事業として開催することにしていただき、この事業は今も継続されています。2013年の第三回報告書では分析対象188件のうち36件(20%)で新生児蘇生法に問題がありと指摘され、2015年の第5回報告書では分析対象534件のうち、NCPRの蘇生の流れ図の処置別に分析され、「人工呼吸」18件、「胸骨圧迫」11件、「気管挿管」8件、「ボスミン投与」27件で問題点が指摘されました。これらの分析内容は、NCPR委員会でも取りあげられ、新生児蘇生専門コース指導者養成コース教材のブラッシュアップに反映されました。

 

 この様に産科医療補償制度で補償対象とされた“分娩を契機として発生した脳性麻痺”事例では、新生児蘇生に問題点ありとされた事例が少なくないことから、そのような事例では、蘇生に立ち会った医療スタッフのなかにNCPR修了認定者がいるかどうかを確認することになっています。2022年春の「第12回再発防止に関する報告書」では久しぶりに新生児蘇生法がテーマとして取りあげられることになり、現在事例の分析作業が行われており、分娩に立ち会った助産師のNCPR修了認定取得率は医師や看護師よりも高い傾向ですが、まだ100%ではないので、無用な訴訟を避けるためにも現役助産師の皆様方は、NCPR講習会を受講して合格した場合は手続きを完了して修了認定証を取得されることをお勧めします。

 

 また産科医療補償制度の保障申請期限は満5歳の誕生日までです。また保障対象となる児は2022年1月1日以降に出生した児では「在胎週数28週以上」と今までよりも範囲が広くなりますから、是非URL(http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp)で詳細をご確認ください。

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