アドバンス助産師Vol.16

2025.02.10

  • 再発防止の最前線:産科医療補償制度が描く未来

    産科医療補償制度は、2009年の開始以来、17年にわたり分娩に関する紛争の防止と早期解決、そして医療の質の向上に努めてきました。2024年発行の「再発防止に関する報告書」では、特に重要な13の脳性麻痺事例を紹介。事例を通じて見えてくる課題とその対策を、医療現場の皆さまと共に考察し、再発防止を目指します。

公益財団法人 日本医療機能評価機構 理事・
産科医療補償制度事業管理者

鈴木 英明

 産科医療補償制度は、分娩に関する紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ることを目的に2009年1月から運営を開始し、17年目を迎えました。補償対象となったすべての事例について原因分析を行うとともに、個々の事例情報を体系的に整理・蓄積し、「再発防止委員会」においては、複数の事例から見えてきた知見等による再発防止策を提言した「再発防止に関する報告書」などを毎年取りまとめています。

 

 2024年3月の「第14回 再発防止に関する報告書」では、別冊として「脳性麻痺事例の胎児心拍数陣痛図紹介集 ―判読と対応を振り返る―」を併せて発行しました。胎児心拍数陣痛図は、分娩中の胎児の状態を推測する有用な手段の一つですが、補償対象となった脳性麻痺事例が分娩中に示すような胎児心拍数パターンは、臨床現場で経験する機会が少ないと考えられます。そのため、本書では、これまでの「再発防止に関する報告書」の分析対象事例のうち、特に教訓となると考える13事例を紹介しています。

 

 本書には、胎児心拍数陣痛図に加えて、各事例の妊娠・分娩経過や脳性麻痺発症の原因等を掲載しています。本書の活用例の一つとして、まず、胎児心拍数陣痛図を判読し対応を検討した後に、分娩後の経過や脳性麻痺発症の原因等の情報も含めて胎児心拍数陣痛図の判読と対応を考察するといった方法が挙げられます。また、臨床現場における利便性を図るため、本制度ホームページにも、見開きの胎児心拍数陣痛図も掲載しています。実用性のある教育媒体となるよう作成しておりますので、アドバンス助産師を含めた助産師の皆さまにも、個別学習やスタッフ間での事例検討等において幅広くご活用いただきたいと思います。

 

 今後も引き続き、同じような事例の再発防止および産科医療の質の向上に資するよう、情報の発信に努めてまいります。

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