アドバンス助産師Vol.9

2021.07.30

  • 【アドバンス助産師ご当地情報】
    新生児蘇生法の技術の習得、その技術の維持・向上のため当院での取り組み、工夫について

    全国各地で活躍するアドバンス助産師の活動の様子をお伝えします。
    今号は、全看護職がNCPR専門コース(Aコース)修了認定者である医療法人佐世保晩翠会 村上病院の取り組みをご紹介します。

医療法人佐世保晩翠会 村上病院 アドバンス助産師 小島 安紀子

 当院は長崎ハウステンボスの近くにあり98年間続く歴史ある産婦人科病院です。年間分娩件数約550件のなかには緊急を要する分娩もあり、新生児仮死で出生する児もいます。

 

 当院では、分娩時に小児科医の立ち会いがないため、2007年の日本周産期・新生児医学会の新生児心配蘇生法(以下NCPR)普及事業開始以降、三代目院長の積極的な働きかけにより、新生児蘇生技術の習得に取り組んできました。2021年現在では、すべての看護職員がNCPR専門コース(Aコース)修了認定者です。なお、蘇生が必要な場面では、NCPRインストラクター有資格者の産婦人科医師とともに協力し、蘇生後の児は地域周産期母子医療センターへ救急搬送しています。

 

 

 NCPRの技術の向上と維持には近隣で開催されるNCPRスキルアップコース(以下Sコース)に参加していましたが、実臨床に即した実践をするには実際の現場での講習が望まれるため、長崎大学の助産教員にコーディネートを依頼し、2018年10月と2021年1月に、当院でSコースを開催しました。同様に、自施設でSコースを開催するクリニックが増えています。当院では、長崎みなとメディカルセンターより新生児科医師を招へいしました。興味深い内容をわかりやすく講義していただき、手技演習も一人一人丁寧に指導していただきました。

 

 

 自院での開催は、いつも使っている物品で演習するためイメージがしやすく、記録、搬送の準備、救急車の手配など、誰がどのような役割をするのか、動線とともに職員間で共有することができ、とても有意義な講習会となりました。講習会終了後は2ヶ月ほど蘇生用具一式を借りて休憩時に練習するなど、職員の意識向上にもつながりました。偶然にも講習会後に新生児仮死の事例が続きましたが、一人一人が意識して声を出し、迅速かつ落ち着いてアルゴリズムに沿った適切な蘇生後、スムーズに救急搬送ができたことは講習会のおかげだと思います。

 

 

 これからも当院が代々引き継いでいる「地域に貢献する医療」を提供できるよう近隣病院と連携を図り、お母さんと赤ちゃんが笑顔で退院できるよう、職員一同、知識と技術の向上に励んでいきたいと思います。

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