アドバンス助産師Vol.18

2026.02.20

  • 【特集:もっと、プレコンセプションケア】
    分娩に立ち会い続ける助産師だからこそ伝えられること

    2015年から続く中学生への「命の学習」。 準備段階から事後のケアまで生徒に寄り添い、行政の枠を超えた3課合同の連携によって培われてきた取り組みの実際と、未来へつなぐ今後の展望についてご紹介いただきます。

心友助産院 代表
西川 佐稲子

 2010年(平成22年)3月3日、5歳のおさなごが餓死。

両親は5歳のおさなごに対して2か月に渡って十分な食事を与えず、ワンルームマンションのロフトでの生活を強い、両親が外出する時はトイレに1人閉じ込めるなどの日々のすえの死でした。

 

 裁判長は、実母がストレスのはけ口としてしか5歳の幼子を見ていなかったと結論付けました。 市の保健師たちは、母子手帳をもらいに来る「妊婦」の姿から若年妊婦、望まない妊娠、経済的リスク等を抱えているの現状を再確認し、「この手前でやるべきことがある」と強く思い、中学生を対象とした命の学習を1つの柱として立ち上げました。

 

 2015年、中学校2年生対象の講演を開催。その翌年、市4中学校での取り組みが開始となります。

この取り組みには特徴が2つあります。

 

1.講演は中学校2年生が助産師、中学校3年生は保健師が担当

 思春期の子どもたちが、自他共の命の大切さを意識し、責任ある行動を自己決定できるような健康教育実施を目的に、分娩に立ち会い続けている助産師だからこそ伝えることのできる日々の業務の中での体感している母の想い、家族の想い、そして何よりも胎児であった「あなた」の生命力を伝えることを一貫して継続しています。 保健師は中学校3年生を対象にライフプランを考える時間を事前に設け、それを基に妊娠、人工妊娠中絶について自ら考える時間を持っています。

 

2.学校教育課、こども支援課、けんこう増進課の3課合同の取り組み

 中学校での事前会議、事後会議に3課の担当者も顔を合わせます。

妊娠や出産についての講演はある意味、その生徒の人生の陰の部分をえぐりかねない時間となりえる危険性を持っていると考えています。

 

 そこで学校での生徒のあり様を現場の先生から情報提供の時間を持ち、配慮すべき状況を共有します。3課それぞれの立場からの意見を聞くことで、私の講演での個々の学校の実情に合わせた方向性が見えてくる瞬間を感じる時間となっています。 事後会議では、生徒のアンケートから見える評価の指標を共有し、気にかかる感想文については生徒の状況を確認し対応を話し合う時間となります。

 

 さて、私が今後やるべきことは、この事業を継続させていくために「後継者を育てること」です。 今は、当院の若手スタッフや、当院での助産実習を経て、他施設で常勤として勤務しながら、月に数回ボランティアとして継続的に携わっている若手助産師たちと共に活動を進めています。 私の使命を果たさなければならない、と2026年を迎え決意をした元旦です。

「命の学習」のひとコマ。思いを込めて言葉を心に届ける講師。

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