アドバンス助産師Vol.11

2022.07.25

  • 【特集】タスク・シフト/シェア
    産科医療におけるタスク・シフト/シェアの実践

     2021年、厚生労働省より2024年4月に向けた医師の時間外労働の上限規制が通知されました。この通知により医療機関では、医師の労働時間の短縮を進めるためにタスク・シフト/シェアを整備しているところですが、助産師には院内助産・助産師外来を遂行するための活動を強化することが求められています。
     助産師が院内助産・助産師外来の開設・運営活動に取り組むことは、医師の業務負担軽減への貢献となりますが、同時に助産師の専門性を活かした社会貢献という観点から重大な責任を引き受けていくことにもなります。
     CLoCMiP®レベルⅢ認証に相当する助産実践能力を保持しながら、アドバンス助産師に必要な活動を強化して参りましょう。

公立八鹿病院 飯野 留美子

 兵庫県北部に位置する但馬地域には二つの中核病院があり、地域住民の医療・福祉を担っています。私が入職した32年前、産科医療も最盛期には年間800件程度の分娩に対応していました。

 しかし、昨今の少子化と産科医師の確保が困難な状況で産科医師1名となり、一時は分娩受け入れ廃止の危機を迎えました。

 

 そのような中、地域住民の皆様からの産科医療継続の強い要望を受け、当時の産科医師・小児科医師の協力と地域住民の皆様のご理解のもと、院内助産制度を開始しました。助産師外来で診察できるよう、エコーをはじめとする診断スキルアップの学習会や、想定しうる異常に備えてのマニュアル整備など準備期間を経て平成20年秋から開始し現在まで、院内助産の分娩件数は1800件を超えました。地域中核病院の使命として、地域の安全・安心して分娩できる場所を継続するために、産科医師の負担を軽減し、助産師の職能を活かしながら日々頑張っています。

 

 助産師だけで対応するためにローリスクの妊婦さんを選定し、また、妊婦さん自身にはご希望通り当院で分娩していただくために、妊娠中の体調管理について指導し協力を得ています。ローリスクとはいえ、分娩時の出血など異常は起こります。その際は医師と連絡をとりながら指示を受け対応し、現在まで事故なく経過しています。2人目、3人目と当院で分娩を希望して下さるリピーター産婦さんも多く、満足と感謝の言葉を残して退院される方々に支えられ、スタッフ一同やりがいと責任の重大さを感じながら日々、業務にあたっています。産婦さんの産む力、赤ちゃんの生まれる力が合わさってなされる「誕生」は本当に素晴らしい瞬間です。

 

 医療介入の少ない院内助産では、よりその2つのパワーを実感します。家族にとって大切で貴重なその時間をお手伝いさせてもらえる事に日々感謝し、これからも母子に寄り添っていきたいです。

よく読まれている記事