Vol.11
2022.07.25
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【特集:タスク・シフト/シェア】
タスク・シフト/シェアと院内助産2021年、厚生労働省より2024年4月に向けた医師の時間外労働の上限規制が通知されました。この通知により医療機関では、医師の労働時間の短縮を進めるためにタスク・シフト/シェアを整備しているところですが、助産師には院内助産・助産師外来を遂行するための活動を強化することが求められています。
助産師が院内助産・助産師外来の開設・運営活動に取り組むことは、医師の業務負担軽減への貢献となりますが、同時に助産師の専門性を活かした社会貢献という観点から重大な責任を引き受けていくことにもなります。
CLoCMiP®レベルⅢ認証に相当する助産実践能力を保持しながら、アドバンス助産師に必要な活動を強化して参りましょう。
香川大学 母子科学講座 周産期学婦人科学
金西 賢治
日本での女性の晩婚化や少子化の進行により、周産期医療の現場は大きな変革がもたらされ、産科医師、助産師や看護師の間でタスク・シフト/シェアリングを取り入れた働き方改革が注目されてきている。
ハイリスク妊産婦の増加や、妊産婦自身に求められるニーズも多様化するなどの背景のもと、より安心できる周産期医療の供給には妊娠前、妊娠、出産から育児期まで切れ目ない医療体制を構築する必要がある。
しかしながら、都市部以外での地域周産期医療の現場では、それらを支える産科医師の働き方改革、地域偏在などで医師不足が問題となっている。
出生数が減少する中、出産、育児は地域の医療や経済など生活基盤の中心であり、この基盤を支えるためにも、周産期医療に関わる医師、助産師の専門性を発揮した協力体制こそが持続可能なシステムに必要と考える。
特に注目されるのは助産師を中心とした院内助産システムであり、医師、助産師それぞれの役割分担を明確にすることで、これらのシステムを安全に運用することが可能と考える。こういった場面でアドバンス助産師など制度を活用することで、助産師たちの動機づけや就労の継続にもつながると考える。
香川県において、地域の分娩を担っていた公立病院が産科医師不足により従来の分娩管理が困難になった事例があった。その際、妊婦健診は継続して行い、分娩は総合周産期母子医療センターで対応するというセミオープンシステムを1名の産科医で開始し、同時に低リスクの妊婦に対して、アドバンス助産師を含めた助産師達による院内助産を開始した。
妊婦健診と分娩を限られた医療スタッフのみで、助産外来、院内助産のスタイルで対応するシステムを構築し、この2年間、分娩数は減少したものの、安全に運用することができている。地域医療における周産期システムのタスクシェアリングの好例として、今後も発展させ継続していきたいと考えている。