Vol.7
2020.08.03
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新型コロナウィルス感染症と助産師教育
~全国助産師教育協議会の対応~可及的速やかに本年度の助産学実習に対する対応策を会員校に示すことが必要であると判断し、このたび会員校に向けて「助産学実習2020 学内実習指針」をお示ししました。
公益社団法人 全国助産師教育協議会 会長 村上 明美
昨年度末より世界中を巻き込んだ新型コロナウィルス感染症の拡大により、多くの助産師教育機関で2020年度の助産学実習が中止・延期となり、助産師教育にも大きな影響を及ぼしております。2020年2月28日には、文部科学省と厚生労働省が連名で「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関 係職種等の各学校、養成所及び養成施設等の対応について」の通知を発出し、実習施設の確保が困難な場合には「実習に代えて演習又は学内実習等を実施することにより、必要な知識及び技能を修得することとして差し支えない」ことが示されました。
公益社団法人全国助産師教育協議会は、2020年4月当初より会員校の助産師教育機関に対して、可能な限り実習期間を後ろ倒しして助産学実習を実施できるよう、継続的に調整をお願いしております。しかしながら、いまだに新型コロナウィルス感染症の医療機関でのクラスターが発生している現状や、感染の第2波・第3波が懸念されることなどを鑑みると、本年度中に看護師等養成所指定規則に示された分娩介助10例程度を満たせない学生が出てくることが想定されます。
そこで、可及的速やかに本年度の助産学実習に対する対応策を会員校に示すことが必要であると判断し、このたび会員校に向けて「助産学実習2020 学内実習指針」をお示ししました(HP会員専用ページに掲載)。
当該指針は、厚生労働省「看護師等養成所の運営に関する 指導ガイドライン」に示された内容を網羅できるように、作成の段階から厚生労働省と情報を共有し、意見交換を重ねてきました。
指針には、本来であれば臨床の場で修得すべき能力を学内実習で可能な限り修得させられるように、複数の事例を提示しています。事例は、「助産師に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度」を意識しながら、段階的に能力修得が積み上げられるように意図して作成されました。さらに、助産師学生が能力を修得した根拠を示す手段として、評価表の活用を推奨しています。指針には、事例とともに評価表を添付し、その活用法の説明も加えました。
その後、2020年6月22日に厚生労働省医政局看護課より「新型コロナウィルス感染症の発生に伴う看護師等養成所における臨地実習の取り扱い等について」の事務連絡が発せられ、保健師・助産師・看護師養成所に向けて、新型コロナウィルス感染症で影響を受けた臨地実習の取り扱いについて厚生労働省の方針が示されました。
助産師養成所に関連した内容では、「学生が2人1組で実習を行うなど、弾力的に実施して差し支えないこと」「分娩第1期のアセスメント及び支援ができ、分娩介助の途中で吸引分娩、鉗子分娩に移行した場合は1回の分娩として算入して差し支えないこと」「学生の到達度に応じて、分娩介助シミュレーターや紙上事例等を組み合わせて学習すること等により必要な知識及び技能を習得できるようにすること」等が示されています。当該事務連絡の最後には、全国助産師教育協議会の「助産学実習2020 学内実習指針(一般公開版)」のURLも併せて紹介されています。
全国助産師教育協議会は、国難というべきコロナ禍においても、助産師教育の質が例年同様に担保されますよう、引き続き柔軟に対応していく所存です。
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