Vol.15
2024.07.10
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新カリキュラム評価
2022年に運用が開始された助産師教育課程の新カリキュラム。
社会が必要とする助産師の養成をめざした、札幌医科大学におけるカリキュラム改善の成果と、今後の課題についてご紹介いただきます。
札幌医科大学 保健医療学部看護学科 専攻科助産学専攻 教授
正岡 経子
2022年4月から助産師教育課程の新カリキュラムが運用開始となり、総単位数が28単位から31単位となりました。本学は、2012年に大学専攻科として設置され、1年間で15名の助産師養成を行っています。旧カリキュラムでは32単位990時間で行っていましたが、新カリキュラムでは32単位1020時間に改正して今年度で3年目となります。
新カリキュラムでは、現在の母子保健や周産期医療の現状等から社会が求めている助産師の役割・能力、在校生および修了生のカリキュラム評価(無記名アンケートおよびインタビュー)の結果を基に内容を検討しました。さらに、本学には2020年度から専攻科公衆衛生看護学専攻が開設したので、保健師を目指す学生との合同授業が可能な環境を活かすことにしました。学生時代から保健師を目指す学生と顔が見える関係でディスカッションする経験を積むことは、他職種と連携・協働する能力の向上に活かせると考えました。
旧カリキュラムの評価では、「正常経過にある妊産褥婦・新生児のケア」については充実し、修了後も学びが役に立っていた一方、「実際の分娩進行に基づいた判断・ケアを学ぶ演習」、「ハイリスク妊産褥婦・新生児のケア」と「乳幼児期および子育て期のケア」等については学修が不足していると回答する学生が多いことが明らかになりました。そこで新カリキュラムでは、臨床場面を想定した学内演習、周産期ハイリスクケア演習および妊娠期から子育て期までの母子と家族を継続的に支える学修の充実を図りました。健康教育論や子育て支援連携論等は保健師養成課程の学生との合同授業としました。
新カリキュラムの評価では、経時的・経日的に変化する紙上事例に基づく助産診断・技術演習については学生より好評価が得られました。一方、ハイリスク妊産褥婦のケア、乳幼児期の診断とケア、不妊の悩みを持つ女性のケアの充実については、課題が継続しています。これらは、学内講義および演習を中心とした組み立てとなっているため、学生の到達状況を向上させるためには、ハイリスク実習の充実やフィールドワーク等の学習形態が必要だと考えています。
現在は、過去に例をみない少子化を背景に、分娩介助例数の確保を優先にカリキュラムを運用せざるを得ない状況にあります。社会が求める助産師の養成をどのようにしていくのか、大きな局面に立たされていると感じています。