アドバンス助産師Vol.8

2021.02.10

  • 【特集】産後ケア事業とアドバンス助産師
    行政と連携する開業助産所の産後ケアの取組み

    2020年は特にコロナによる妊産婦の不安、サポートが得られにくいなど産後ケアへの期待は大きくなりました。産後ケア事業における助産所と行政との連携について組織的な関わりの重要性を述べたいと思います。

前神戸市助産師会会長 毛利助産所所長 毛利 多恵子

 神戸市で分娩を取り扱う有床助産所を開業しています。7年前から産後ケア事業を受け入れています。2020年は特にコロナによる妊産婦の不安、妊産婦がサポートを得られにくいなど産後ケアへの期待は大きくなりました。産後ケア事業における助産所と行政との連携について組織的な関わりの重要性を述べたいと思います。

 

 公費助成のある産後ケア事業は、利用者の経済的負担を少なくし利用のしやすさがあります。市町村がこの産後ケア事業を開始できるよう、助産師の職能団体等が交渉することが必要となります。神戸市助産師会として、産後ケア事業の重要性や産後ケアの受け入れ体制があることを行政に知らせ、予算化されるよう団体として行動しました。産後ケア事業を始める場合は、行政や市議会に要望することが必要です。また毎年行政や市議会に要望を伝え、徐々によいシステムとなるように働きかけました。

 

 特に2020年はコロナの影響と従来の利用料が半額となり、広報や口コミも徐々に広がり、利用者は4倍となったと行政よりきいています。行政が予算枠を大きくした理由は、産後ケア事業の実際について地域の保健師や行政、市議会が評価した結果だと考えています。

 

 産後ケア事業は、母親からの希望や保健師が必要と判断した場合に、行政から依頼書が届き、助産所では実施したケアなど報告書を提出します。フォローが必要な場合は、地域の保健師につなぎます。精神面における対応については、精神科関連の医療機関、産婦人科医会、保健所 助産師会などが集まり協議する機会を行政が提供し、どのような連携ができるか、紹介システムなど顔の見える形で話し合えたことは安心につながりました。また周産期センター、病院、診療所、助産所、保健所が顔を合わせる機会も行政が提供し、地域における産後ケアの連携について協議できました。行政と協力することによって多職種連携がしやすいと感じました。

 

 医療機関は、支援が必要な妊産婦については、保健所に「養育支援ネット」などを通して情報を伝えています。保健師は早期訪問を通して対応し、必要時産後ケア事業の紹介をしています。また医療機関の助産師から情報提供を受けて産後ケアを利用する方も多く、母親たちは「病院の助産師さんに紹介してもらって知ることができた」と喜んでいました。

 

 行政と助産所の連携は、個人というよりは、職能団体の組織として交渉し、結果的に母子によりよいケアが届くようにすることが重要だと思います。個人の助産師は問題や課題を職能団体に伝え、職能団体は現場の助産師や母子の声を行政や議員に伝え、システムをよりよいものに改善することができます。母子の状況を詳しく把握している病産院の助産師と地域の助産師がもっと連携をとれるシステムつくりが今後の課題です。「切れ目のない支援」には、「地域の身近な場で顔のみえる継続ケア」がメンタルヘルスにはとても重要だと感じています。

 

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